さて、本日は “develop”(発達・発展する)を採り上げます。
能力が発達する、国が発展する、新商品を開発するなど、前向きな言葉です。この単語の語源ですが、ジーニアス英和辞典によるとー
包み(velop) を解く(de)、となっています。
ちなみに反対語は、envelop(包む)です。名詞 envelope は封筒の意味ですね。なので、develop は封筒のなかのものを取り出すような感じですね。
さて一般的に、例えば「能力が発達する」というと、努力や工夫によって、最初は大したことがない能力を優れたものへと作り上げていく、というイメージがあります。
でも、「包みを解く」ですから、もともと優れた能力が人のなかにあって、それを掘り出すことが develop のイメージになります。
人の能力は最初は大したことなくて、努力や工夫によって優れたものへと作り上げていくようなものなのか? それとも、優れた能力は人のなかにもともと眠っていて、それをうまく引き出すことで、それを発揮できるということなのか?
私はどちらか分かりません。ただ、優れた才能はもともと人のなかに埋まっている、という方がなんか夢があるように思います。誰にでも埋まってはいなさそうですが。。
ついでながら、この語源を見ると、昔読んだ夏目漱石の『夢十夜』に出てくる運慶の話を思い出します。
ー 明治の時代なのに、運慶が仁王像を彫っている。主人公は、運慶が無造作に鑿を使っているのによくもまぁ思い通りに作れるものだと感心していると、そばにいた若い男が「いやあれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の中に埋まっているのを、鑿と槌の力で掘り出すまでだ。」と言う。
優れた芸術作品も、そこに眠っているものを掘り出すということなのでしょうかね。でも、掘り出す技術が要りますよね。このあと主人公は、ならばと自分で掘り出だそうとしますが、「ついに明治の木にはとうてい仁王は埋まっていないものだ」と悟るのです。
運慶でないと仁王像は掘り出せないのです。